「結局、どの会社がいいんだろう」
スマホを開けば、どの会社も同じような言葉を並べている。
“成長できる環境”
“若手活躍”
“アットホーム”
正直、違いなんて分からない。
だから、
「年収高そう」
「大手だから安心そう」
そんな理由で会社を見始める。
昔の自分もそうだった。
就活時代の自分は、
「とにかく稼ぎたい」
それしか考えていなかった。
だから最初に入ったのは、投資用不動産の会社だった。
完全に“お金”で選んだ。
最初は、本当に楽しかった。
契約が取れる。
数字を作る。
給料が増える。
高いお酒も飲んだ。
高級店にも行った。
ブランド物も買った。
「イケてる社会人になった」
と思っていた。
数字を作れる人間が正義。
稼げる人間が偉い。
本気でそう思っていた。
数字を作っていれば、
自分に価値がある気がしていた。
終電まで仕事をして、
朝まで酒を飲む。
家に帰ってシャワーだけ浴びて、また出社する。
何もしていない時間が怖かった。
止まったら、自分の価値がなくなる気がしていた。
朝、鏡を見ても、
疲れている顔しかなかった。
でも、それすらどうでもよかった。
次の数字を作らなければいけない。
それだけだった。
仕事中、涙が出てきた。
でも会話は普通にできた。
だから気にしなかった。
当時付き合っていた彼女も離れていった。
別れ話をしている最中も、
「明日のアポどうしよう」
とか、そんなことを考えていた。
それが普通だと思っていた。
物を買っても、また次が欲しくなる。
数字を作っても、また次の数字。
高い酒を飲んでも、
高い物を買っても、
次の日にはまた数字。
気づいたら、
仕事以外、何も残ってなかった。
その後、自分は自衛隊へ入った。
20代後半からの転職。
周りは年下ばかりだった。
体力もきつかった。
でも、
「大丈夫ですか」
と言ってくれる人がいた。
不動産会社時代には、なかった感覚だった。
その時、
初めて人に助けられた気がした。
誰かが作らなければ、社会は回らない。
災害の後、
最初に現場へ入るのも建設業だったりする。
でも、
その仕事をする人が減っている。
夏の現場は暑い。
冬は寒い。
雨で工程が崩れる。
それでも、
次の日になると、また人が集まっている。
20代の社員が、
50代の部長に仕事の相談をしている。
若手が悩みを抱えながら、
今日も現場へ行っている。
「辞めたくなったときはあった」と若手社員に言われたこともある
でも、
「先輩が見捨てなかった」
と言っていた。
就活では、
会社の名前や初任給だけじゃなく、
“どんな空気で人が働いているか”
を見てほしい。
若手が質問しやすいか。
失敗した人を見捨てないか。
怒られた若手が、次の日もちゃんと来ているか。
20代の社員が、50代の部長に相談できるか。
そういう空気は、
説明会より、現場に出る。
5年後。
コンビニで酒を買って、
「明日仕事行きたくないな」
と思いながら寝る生活になるかもしれない。
でも朝は来る。
だからまた会社へ行く。
気づいたら、
仕事以外、何も残ってなかった。
もし、
「このまま就活するの、少し怖いな」
と思ったなら、
会社の名前じゃなく、
“どんな顔で働いている人がいるか”
を見てみてほしい。
気づいた時には、
仕事以外、何も残ってないかもしれない。
佐伯綜合建設㈱ 常務取締役 佐伯佳優